漫画アプリ・ピッコマにて連載中の「バトリの息子」73、74話。
※74話、2月17日に追記しました。
特別な存在だったアリンを失ったことで、キヨムは考えを変え、ついに戦争に赴くことにしました。
73話
異民族との戦いでオギスト子爵は追い詰められていた。
もうダメかと思ったときに助けに入ったのがキヨム率いるギボルの軍。形勢逆転し、異民族を蹴散らすことに成功する。小さな村のオソンビルなど正規軍は気にしてくれず、藁をも掴む思いでギボルに援軍を頼んでいたのだった。しかしギボル軍もまた戦に出たばかりと聞いて諦めていたところの応援で、オギスト子爵はキヨムに恩を感じ英雄と呼ぶ。しかしキヨムは多くの死者をだしたのでその資格はないと虚ろな面持ち。戦いが終わればまた次の戦いが起こり、初めは死体を見て食事もままならなかったのが今では平気に、慣れていくのが怖い、いつまで続くのかと。異民族側から始めたことでも、帝都はそれを口実に東部の異民族達を一網打尽にするつもりで無理に戦を大きくしようとしているとキヨムは話す。子爵はもうすぐある大規模な討伐に賭けるしかないと言う。バトリ夫人は、ギボルに残った人達のため物資や人手のないなか切り盛りして苦労していた。オギスト子爵は、戦争が終わったらお二人で幸せな未来を築くよう言い、自身にも今度娘が生まれそれが未来だと話す。キヨムは以前子爵から生き残る多数のことを考えろと言われた言葉で耐えているというが、就寝中にアリンの言葉を思い出し飛び起きる程参っていた。テントを出るとすぐフェレンツが現れ、キヨムの手柄を誉める。キヨムの動きのおかげで諸侯らも参戦したのだという。キヨムは無視しフェレンツとすれ違う際、アリンと呟くがフェレンツはしらばっくれる。
キヨムは理想と選んだ現実との間で、叫びながら戦っていた。自分の大切なものを守るためにと数百人の命を失ったが、それは自分を正当化しているだけなんじゃないかと。未来のため帝国のため愛する人のため、それで全て許されるのか。どちらの命も同じものなのに天秤に測り、この者達の命を捨てた。そう悩むキヨムの傍らで、今にも死にそうな異民族が手を伸ばし、かあさんと言う。過去、自分が掴めなかったキヨムの母の差し出された手と重なり、キヨムは激しくショックをうけた。泣き叫ぶキヨムをフェレンツは屋上から見ていたのだった。
74話
絶望し叫ぶキヨムを見下ろすフェレンツ。
この地獄のような世界は、皆が救いを求め手を伸ばす。全ての手をつかむことはできないのに、理想ばかり追い求めているとキヨム自身が腐ってしまう。そこからキヨムがどうなるのか変わるのかがフェレンツ、ビロの関心。そこへ現れたのはエルジェーベト。彼女のために命をかけたキヨムを、エルジェーベトは心配して来たのだった。
自軍テントにて。キヨムは自身の矛盾を後悔し泣き、自分の存在意義すらわからなくなっていた。キヨムをビンタするエルジェーベト。彼がいなければ彼女がどうなっていたのか、キヨムだからできたこと、キヨムを信じてついてきたのにキヨムが揺らいだらどう生きていけばいいのか、海を見せてくれるんでしょうと抱きつく。キヨムのおかげで多くの人が救われた、今理想が叶わなくてもそれが間違っていたわけじゃないと、エルジェーベトはキヨムを諭し励ます。自分たちは手の届く人をかろうじて守れるちっぽけな存在、追い詰めないでと涙を流した。私のせいで罪悪感を感じるなら、自分もその罪を負うから無事に帰ってきてと口づけを交わす。その二人の姿をテントの入り口の隙間から覗く者がおり、そして去った。
砂浜にいるキヨム。白い帽子が海へ飛んでいき、キヨムは取らなくて大丈夫か気にする。だがエルジェーベトが、過去は取り戻せないから放っておいて大丈夫と微笑む。手を繋ぐ二人。現実が自分の望んだものでなくても、一握りでも守ることができたら意味がある。そんなものなのかなと、キヨムは気付き府に落ちる。
そう思った瞬間、キヨムの体を槍が貫いた。味方に後ろから。倒れ血の涙を流すキヨム。キヨムはエルジェーベトの所に帰れなかった。
その頃エルジェーベトはテントでキヨムを待っていた。テントに入ってきたのはフェレンツ。試練が全てを変えると呟きながら、エルジェーベトに近づく。怯え、ダメと言う彼女。エルジェーベトの未来には私はいないんだなと手を伸ばすと、ポキッという音がした。
・・・
救いを求める手を手放さない、そう決めエルジェーベトやアリンの心を救うことができたキヨムでしたが、フェレンツにいいように振り回され、どう転んでも辛い状態まで追い詰められてしまいました。そして選んだのが命の選別の道。全てを救いたいと思っていた彼には耐えきれるものではなかったんでしょう。
フェレンツことビロですが、彼を見ていると「ジョジョの奇妙な冒険」6部のボス、エンリコ・プッチをちょっと思い出します。彼は「 お前は 自分が『悪』だと気づいていない… もっともドス黒い『悪』だ 」というセリフで評されるのですが、そのコメントがしっくりくるなーと思いまして。ビロはビロで彼の理想を突き進んでいるんですよね。悪いことして利益を得ようとしてるよくいる悪役というわけじゃなくて、ただ純粋に突き進んでいる。問題は価値観が周りと全く違うことという。イプセン侯爵はさすがに気持ち悪かったですが、敵役のキャラクターも魅力的に描いてる漫画だと思います。
来週74話更新されたら続きをまた書きたいと思います。(2月17日追記しました)
キヨムの戦死はやはり仕組まれたものだったのですね。ようやく彼にも理想の落としどころが見つかってこれからというときに、思想を押し付けるビロがやらかしました。味方に刺されたキヨムはどんな気分だったのでしょうか。残していくエルジェーベトのこと、殺害されたアリンのこと、掴めなかった救いを求める色んな手。キヨムの死はただひたすらに画面が真っ暗で、切ないものがありました。
そしてエルジェーベトに手を出すフェレンツ。何がしたいのか、エルジェーベトを見ているのか、本当は母親のオリビアを見てるんじゃないのか、真相はどうなんでしょうね。
それではここまで読んでくださってありがとうございました。
また次回をお楽しみに